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2度反復される三幕構成の素晴らしさ〜脚本の魅力

空中海賊ドーラ家がシータとパズーを追いかけるシーン© 1986 Studio Ghibli
空中海賊ドーラ家がシータとパズーを追いかけるシーン© 1986 Studio Ghibli

本作の脚本の魅力は「2度反復される三幕構成」にある。三幕構成とはストーリーを三つの章に分割することで、物語の内容を引き立てる脚本技法のこと。

登場人物の設定を明らかにする「第一幕」と、登場人物に降り注ぐさまざまな問題を描く「第二幕」、そして主人公の目的が達成される「第三幕」からなり、幕の間にストーリーを異なる方向へ転換させる2つの「プロットポイント」が設定される。

通常の映画では、この3幕構成はせいぜい一回だが、本作では、この構成がパズーとシータそれぞれの視点から2度反復されるのだ。

第一幕:パズーとシータの出会い
プロットポイント1:ドーラ一家と軍隊の登場

第二幕:シータが連れ去られる
プロットポイント2:パズーがドーラ達の仲間に

第三幕:パズーがシータを救出しラピュタへ

第一幕:ラピュタへの到着
プロットポイント1:ムスカによるシータの連れ去り

第二幕:ムスカが語るラピュタの真実
プロットポイント2:パズーの登場

第三幕:バルスから大団円へ

ここで注目したいのは、前半と後半でそれぞれパズーとシータが物語の主人公になっていることだろう。つまり本作は、パズーとシータ双方の成長物語として捉えることができるのだ。

また、理知的な印象のムスカが極悪非道の人物に、野蛮な印象のドーラが頼れる母親的存在にと、前後半で悪役の印象も大きく変わっている。本作の悪役たちが魅力たっぷりなのも、本作の脚本の巧さと密接に結びついている。

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