大友良英が担当した音楽の魅力
音楽を担当したのは、ジャズミュージシャンであり、映画音楽のフィールドでも活躍する大友良英。NHKの連続テレビ小説から政治色の強いドキュメンタリー映画、大作映画まで、様々なジャンルの作品を手がける大家だが、坂元裕二脚本作品に参加するのは今作が初となる。
主人公である麦と絹は、音楽には並々ならぬこだわりを持っているが、自身を描いた映画の音楽を大友良英が担当すると聞けば、文句を言わないどころか、泣いて喜ぶに違いない。思わずそんな想像をしたくなるほど、絶妙なスタッフィングである。軽快なギターサウンドが印象的なメインテーマは、恋をすることの喜びをストレートに表現している。
実在する小説家や映画作品が豊富に引用される本作のスタイルは、音楽面でも際立っている。麦と絹が初めて出会った夜にカラオケで歌唱した曲は、4人組ロックバンド「きのこ帝国」の「クロノスタシス」。カラオケのシーンは後半にも用意されている。2人が別れを決意した夜に、2人が声を合わせて歌うのは、男女混成4人組バンド「フレンズ」の「NIGHT TOWN」である。
その後に続く、ファミリーレストランを舞台にした別れ話のシーンでは、音楽は使用されず、2人の間に流れる重苦しい空気、本音をぶつけ合う2人の言葉が生々しく迫ってくる。ポップなラブストーリーでありながら、恋愛のネガティブな側面も赤裸々に描く本作の絶妙なバランス感覚は、サウンドトラックによって巧みにコントロールされているのだ。
主な使用楽曲
きのこ帝国「クロノスタシス」
フレンズ「NIGHT TOWN」
Awesome City Club「アウトサイダー」
Awesome City Club「今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる」
Awesome City Club「ダンシングファイター」
Awesome City Club「Don’t Think, Feel」
Awesome City Club「Lesson」
GReeeeN「キセキ」