ホーム » 投稿 » 日本映画 » レビュー » 映画「仁義の墓場」刑務所の屋上からダイブ…。破天荒なヤクザの半生を描く衝撃の実話<あらすじ 考察 解説 評価 レビュー> » Page 7

静と動を際立たせる卓越した音使い~音楽の魅力~

音楽を担当したのは、1936年生まれの作曲家、津島利章。『仁義なき戦い』シリーズの音楽を手がけたことで、映画史にその名を刻む存在だ。本作では『仁義』のメインテーマに匹敵するような、インパクトのあるメロディーはないものの、重要なシーンで静と動を際立たせるサウンドトラックが見事な働きを見せている。

刑務所に入って以来、久しぶりに上京した石川が梅宮辰夫演じる今井のもとを訪れるシーンでは、距離のある2人の対話が長回しの固定ショットで描写される。音楽は一切なく、口論に発展していく2人のセリフのみが響く。緊張感が頂点にまで高まり、今井が石川に飛び掛かり、後者が刃を振るう瞬間、活劇調の音楽が流れ、状況の変化を高らかに告げ知らせる。

静と動を際立たせる働きは、サウンドトラックのみならず、音響にも見出せる。石川がかつて逆らった河田組のもとを訪れ、妻の遺骨を頬張るシーンでは、静寂に包まれる中、「ポリッポリ」という咀嚼音だけが悲しく響き、周囲のヤクザは石川のグロテスクな振る舞いに顔をしかめる。

また、石川が骨壷を持って墓場を訪れるシーンでは、念仏を唱える声が終始響いており、死を予兆させるムードが濃厚に漂う。そんな中、墓前に添えられた水を使って覚醒剤の粉を溶かし、注射器を腕に突き刺す石川は完全に狂っている。

主人公の狂気的なアクションを引き立たせる音響の効果は高く評価されて然るべきだろう。

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