「役から学ぶことが多かった」
演じて感じた役柄が持つ強さ
―――今回、松田さんが演じた石崎あゆみという女性は、旅館を支えていくことの重責を背負いながら、ひたむきに生きる女性ですね。演じてみて、どんなことを感じましたか?
松田「あゆみは、風花ちゃん演じた由香を羨ましく思っているところがあって。小さい時から由香と一緒にタップをやっていて、その後由香は東京に行く。あゆみも家族の反対を押し切って行くことができたかもしれないけど、一歩を踏み出せずに加賀に残るという決意をした。だからあゆみを演じている時は、キラキラしている由香がとにかく羨ましかったです。
一方で、あゆみを俯瞰して見ると、守る強さを持ったキャラクターでもある。“上京する決心がつかなかった”と言ったらネガティブな言い方になりますが、裏を返せば“今いる場所をしっかり守れる人”でもあって。守ることから生まれる優しさと強さを持ち合わせている子だなって思いながら演じました」
――― 一方の中村さんが演じた星野麻衣という女性もまた独立心のある強い女性だと感じました。役を通して中村さん自身の生き様や覚悟が見えるようでした。どんな想いで演じられましたか?
中村「麻衣からは学ぶことが多かったですね。麻衣は売れっ子キャバ嬢として身を立てて、第2の人生を考えた時に、女将をやろうと加賀を訪れるわけですが、キャバ嬢時代のお客さんとバッタリ会った時に、『旅館でキャバクラでも開くつもり?』とバカにされてしまう。それに対して毅然とした態度で言い返します。
キャバ嬢も女将もおもてなしをすることにおいては変わらない。職業差別をされても自分の言葉で言い返せるところがカッコいいなと。見た目などは派手で私自身とはかけ離れている部分もあるけれど、学ぶところが沢山あって、共感をもって役に入り込むことができたかなと思っています」
―――なるほど。ちなみに様々な作品に出演する中で、共感しづらい役を演じる機会もあるかと思います。そうした際、どのようにして役に入り込むのでしょうか?
松田「“そういう考え方もある”って思うしかないかな」
中村「私も、年齢を重ねるにつれて、自分とは違う考えの人に対して以前よりも寛容になってきたと言いますか。“そういう考えの人もいるんだな”って思えるようになりました。
共感できない役が来たとしても、自分の中でいい落とし所を見つけられるかなと思います」
松田「お芝居をやっていて面白いのが、役に入り込むと、物事の捉え方とか動きがガラッと変わること。
例えば、ペットボトルの水を見て、私は好きだからゴクゴク飲むけど、味が付いてない飲み物が嫌いな人は、水を飲む時に一瞬ためらったりする。共感できない役であっても、その子の考え方を身に馴染ませることで行動が変わる。それが凄く面白いと思っています」