「これほど俳優さんにアイデアや意見をいただいたのは初めてです」
作品をよりよくするための会話

――役者からのアイデアも取り入れるとプレス資料にありましたが、今作も、お二人で作品内容を詰めて行ったのでしょうか？

荒木「自分自身もどうやって修正していこうかと悩んでいたので、何がわからないのかを若葉さんに話してもらって、手探りの中で前に進んでいきました。俳優さんからアイデアや意見をいただいく場合って、やっぱり自分がこんな風に映りたいとか、こんなキャラクターを演じたいというんだろうなと思っていたら、まったく違う地平から脚本に対して意見を言ってくれるわけです。俳優としてというより、本作に関わるクリエイターのひとりとして。面白かったですね」

若葉「僕は最初に『荒木伸二監督はどういう人物だろう』と知ることから始めようと思いました。ソリッドな世界観の作品なので、凶暴な人かな、壊れちゃっているタイプかなと想像していたんです。だけど、初めて会う日に遅刻してきて、『すみません、すみません！』と、本当に腰が低くて（笑）。見た目、フツーな人が来たので、意外だなと思いました。でも話しているうちに、無自覚な凶暴性が見えてきて、『この人がこの脚本を書いたんだ、なるほど』と、自分の中でリンクしていきました」

――その出会いから、話し合って作品をブラッシュアップさせていったのですね。若葉さんはこれまでも作品にアイデアを出してきたのでしょうか。

若葉「脚本家に呼ばれて話をしたり、宣伝会議に出席してプロモーションのヴィジュアルについても話したりすることもあります。俳優たちは与えられた役を的確に演じるけれど、その後の宣伝とかそれに伴うビジュアルのことなど、どういう風に展開しているのか知らない人が多いんです。公開するときに、作品のビジュアル、プロモーションの内容を初めて知るわけです。でもそれでいいのかなと思っていました。

だから僕は『こういう風にやったらみんなに面白いと思ってもらえるんじゃないか』と、思うんです。俳優も意見を出し合うことが大事なことなんじゃないかと。深く関わった作品だからこそ、自信を持って『自分たちの映画を観に来てください』と言える。時々、『日本映画は終わっている』という声を聞きますが、行動に移していないからだと思うんです。僕は積極的に首を突っ込んで関わっていきたい。そうしないと宣伝もできないと思うんです」