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「無知だからこそできてしまうこともある」
今の自分ができることに精一杯励むこと

写真:武馬玲子
写真武馬玲子

―――最後に少し、山本さん自身についても伺えればと思います。インタビュー中、手で顎を触る仕草をよくなさっているなと思って。映画の中では桐子も…。

「いや、それただの私です(笑)」

―――映画の中で、桐子が美術部さんが黒い物体を作るのに試行錯誤しているのを見るシーンでも顎に手をやっていて、カットが変わると家でテレビを観てるんですけど、その時も手で顎を触っていて。カットが変わっても身振りは繋がっている…凄く面白かったです。

「実は監督からはイン前にチラッと『桐子には一つ癖のようなものがあってもいいかもね』と言われて。『いいんじゃない。でも決めてやると出来なくなりそうだよね』なんて話をしていたのでした。

その時はフワッとしてたんですけど、自分がよくやる癖は監督にも言ってあって。それを今の今まで忘れてましたが、そっか、確かにしっかり映っていますね(笑)」

―――ちなみに山本さんは今まで映画に親しんで来られましたか?

「それが全然親しんでこなくて。本当に全然観て来なかった人生ですね」

―――映画に出演する立場になられて、初めて「映画って何だろう」と考え始められたのでしょうか?

「そうですね。本当に全然観てこなかったから、何か言われた時に反応できないこともあるけど、現時点での私の理論で言えば、映画を観ることによって良くなることはもちろん沢山あると思うけど、無知だからこそできてしまうこともあると思っていて。

これは色んな事にも当てはまると思うのですけど。知らないままずっと生きていくのって多分無理だと思うから。今のこの状態、今の自分ができることを今は楽しんでやっています」

―――例えば、レンズサイズを知らなくて、どこまで映っているか分からないからこそ出来る演技もありそうです。

「そうですね。自分を肯定するみたいになっちゃいますけど、年齢、性別、国籍の異なる人が集まって面白いものができたり、化学反応が起きるのと一緒で、いろんなタイプの役者がいるからこそ面白いのかなと。

ただ、映画をまったく観てこなかった人生だけど、映画に関わるようになってから、現場にいさせてもらうことにすごく刺激を受けていて。映画づくりには苦しい局面もあるけど、それでもみんなでどうにかする。

みんな大人なのに子供のようにやりたいことをやっている。そういう環境で仕事をさせていただいていることに喜びを感じていますね」

(取材・文:山田剛志)

メイク:kika
スタイリスト:佐藤奈津美

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