観客は映画でしか見ることができない”何か”を求めている
そして、『黒鉄の魚影』では興行収入138.3億円と、念願の100億円超えを達成。本作ではコナンのもう一人のヒロインというべき灰原哀が黒の組織に誘拐されるという衝撃的な告知があった。
本編では灰原を救うコナンの姿やコナンに対する灰原の心境などが見どころとなり、人気を獲得していったものと思われる。
また灰原は原作での初登場が18巻(1998年2月発売)と比較的早く、認知度も高いキャラクターだ。成長と共に、原作・アニメから離れたかつてのコナンファンを劇場に呼び戻すことに一役買ったという見方もできるだろう。なお、本作には少しではあるが安室透や赤井秀一も登場している。
このようなキャラクター性を重視した構成が多くなったことでファンの心理にどのように影響したのだろうか。
名探偵コナンの原作の話は前述の通り、本編と関係がない殺人事件が起きるだけの話も多く、主要な登場人物が活躍することがそれほど多いわけではない。
それゆえに、映画化しても「スケールの大きい殺人事件」というだけでは名探偵コナンを知っている人でも、いつもの話の延長としか見られず、なかなか映画館までは来てくれないかもしれない。
だが、キャラクターに焦点を当てたストーリーはファンを呼び込む要素としては大きそうだ。映画でしか見ることができない”何か”をファンはどこか求めているに違いない。
というわけで、視覚的にインパクトが強く見どころが分かりやすいアクション性と、いろいろな人物が活躍するキャラクター性を重視したことで多くのファンの需要を満たし、興行収入が大きく伸びたのではないだろうか。
2024年公開の『100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では服部平次VS怪盗キッドという今までにない構図が告知されており、ファンへの期待感を高めている。
こうしたコナン以外のキャラクターがふんだんに活躍する展開は今後も続くとみられ、さらなるコナン人気をもたらすことになると見てよいのではないだろうか。
(文・ガラガラ)
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