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『アウトレイジ』とは真逆の人物像

1999年の北野武
北野武監督Getty Images

ここからは、今作に登場する登場人物像に迫りたい。北野武監督による映画『アウトレイジ』シリーズの謳い文句は、「全員悪人」であった。しかし、今作にあえて勝手にキャッチフレーズを付けるとすれば、真逆である「全員善人」だろう。

そう、出てくるキャラクター全員が、みんないい人なのだ。この物語は「善」のベクトルに振り切っている。映画作家としての顔とは異なる、たけしのアナザーサイド(優しい一面)が、非常に溢れ出ていると感じるのである。

登場人物を紹介するにあたり、まずは、悟の幼馴染である、淳一(桐谷健太)と、良雄(浜野謙太)の存在について、言及したい。彼らは、ずっと恋愛下手の悟のことを気にかけ、時にはアドバイスをし、時には茶化しに、悟とみゆきが落ち合う「ピアノ」へと先に乗り込んでいる。

アラフォーにて、こんな友人たちは、なかなかいないだろうと思う次第である。ちなみに、北野武氏は映画『キッズリターン』においても、青春時代を共に過ごした男同士の友情を色濃く描いている。

自身は80年代の漫才ブーム時代を共に駆け抜けた島田洋七氏や、後輩である所ジョージ氏を親友として名を挙げており、男同士の絆の深さ、腐れ縁という関係性がとにかく好きなのであろう。恋人同士はいつかは分かれることはあっても、同性同士の友情は不滅といったところであろうか。

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