猪木本人を語る上で絶対に必要となるファンの存在
ドラマパートでは、猪木ファンだった小学生が、その言葉を胸に成長し、大人になる。しかしながら、会社が倒産し、家族からも逃げられ、廃棄物処理業者で力仕事に勤しむ中年男性が、ゴミの中から見つかった猪木のビデオを見て、涙ながらに声援を送るのだ。
このドラマパート、一見、脈略もなく挿入されているようで、最初は戸惑うが、最後、人生に行き詰った中年男性を安田顕が演じ、少年期から一本の線で繋がっていたことに気付く。猪木本人を語る上で、そのファン像を描くという意味では必要なパートだったのだ。さらに、ここに新日本の田口隆祐と後藤洋央紀を俳優として起用するという粋な演出もなされている。
“猪木信者”を自称するくりぃむしちゅーの有田哲平が、元々は猪木邸の一部だった新日本の道場を訪れる。出迎えた棚橋は、猪木が新日本の経営から離れた際に「自分の提案で道場から外した」という猪木の等身大パネルを、再び道場に飾ることにする。
猪木を語るにあたり、やはり政治家時代の功績を外すわけにはいかない。「スポーツ平和党」を立ち上げ、単身、湾岸危機の渦中にあるイラクに乗り込み、人質となっていた在留日本人の解放に繋げた。ここでの一連の活動と言動も、当時の映像や写真とともに振り返っており、現在では考えられないような偉業であったことを示している。