最底辺とも言える環境で生きる姉弟の姿に心を打たれる
本作では、特殊詐欺集団が描かれているが、構成員にとっては生きるための術であり、手を染めなくてはならなくなった“やむを得ない事情”がある。
安藤サクラ演じるネリの小気味好い足音からは淡々とした人柄、生きるために腹を括った覚悟のようなものがにじみ出ている。
選択の余地がない複雑な環境で生まれ育った姉弟・ネリとジョー。劇中、ネリがジョーに近づいてちょっと世話を焼く場面があるのだが、ジョーは警戒することなくネリを受け入れていた。ジョーにはネリしか寄りかかれる人がいなかったということが伝わり、鑑賞後、しばらく引きずったシーンだった。
2人が生きる世界は最底辺とも言える環境ではあるが、そんな中でも人の心だけは失っていない。スリリングで疾走感に溢れた展開をドキドキしながら見つめていると、次のような問いを突きつけられた気がした。
「あなたはネリのように生きられるだろうか?」
ただの娯楽作では味わえない、深いメッセージ性を有しているところも本作の魅力だ。