殺戮シーンを際立たせる人間ドラマの妙
本作は山崎監督が得意とするドラマパートが、かなり濃厚に描かれているのも特徴である。山崎監督の代表作である「ALWAYS 三丁目の夕日」は、人間ドラマが繊細タッチで描かれており、実に見事であった。
本作で描かれるドラマパートには、敷島と典子が出会い、そして助け合いながら生きていく姿が描かれているが、その根底にあるのは戦争やゴジラに対する憎しみ、復讐心である。
戦争がなければ、ゴジラがいなければ、もっと幸せな人生を歩めたはずだ。だからこそ戦争が憎い、ゴジラが憎い、出来ることなら復讐してやりたい、と心の底から願っていたはずである。
そんな負の感情が観客側にも伝わり、人類とゴジラの対決を心が震えるようなシーンに仕上げているのである。
もしドラマパートが入念に描かれることなく、ゴジラによる破壊や殺戮シーンだけに焦点を当ててしまったとしたら、それはあまりにも深みがなく、子供向けの映画に仕上がってしまったのではないだろうか?
人間とゴジラ、その2つの存在を融合させることにより、ゴジラによる破壊や殺戮シーンが際立ち、本作に深みを持たせていると考えられる。