ブツ切りの「ドラマ初回SP感」が拭えない…再現度だけで評価するのは間違いか。実写映画『ゴールデンカムイ』考察&レビュー
text by 灸 怜太
1月19日(金)公開から3日間で興行収入、既に約5億円を突破した人気作『ゴールデンカムイ』。原作ファンの支持率が高く、何度も劇場に足を運ぶ人もいる一方、実写化あるあるとして”コスプレ大会”とも言われ、賛否両論の作品となった。今回は、マンガ原作の人気場面を併せて、実写映画としての完成度を徹底解説する。(文・灸 怜太)
ギャグあり、グルメあり、猟奇アクションあり
再現度不可能なストーリーを忠実に再現
原作ファンの様々な期待、そして不安を乗せて、ついに公開された映画版『ゴールデンカムイ』。気になる「再現度」は、概ね高評価で、観客の満足度も高いようだ。
“実写化不可能”と呼ばれるマンガはよくあるが、『ゴールデンカムイ』は、なかでもハードルが高いといわれてきた。
明治時代の北海道を舞台にした壮大なスケールの物語や、個性的すぎるビジュアルのキャラクターなど、実写で再現するのが困難なポイントが多いというのもあるが、そもそも『ゴールデンカムイ』というマンガそのものが多層的すぎるのだ。
アクション、バイオレンス、狩りに猟奇サスペンス、それにアイヌの伝統文化&グルメ、さらにシュールなギャグや変態紳士たちの生き様といった要素をチチタプ※1して、団子に丸めてオハウ※2に仕立てたような作風で、ページをめくるたびにジャンルを軽々と飛び越えるような怒涛の展開が続く物語を1本の映画としてまとめるのは無謀ともいえる。
脚本と演出、それに俳優陣のセンスが問われまくることは間違いない。
※1・肉や魚を小刀で細かく刻んで食べるアイヌ料理のこと
※2・アイヌ語で「温かい汁物」の意味。