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「評価の基準は再現度」に異議を唱える

玉木宏【Getty Images】
玉木宏Getty Images

ようやく映画がドライブしてくるのは、捕らえられた杉本の頬に団子の串が刺さるあたりから。兵舎でのバトルから脱走、そして馬橇チェイスと至るシークエンスは、映画オリジナルの攻防も含めてテンションが高い。

ここで鶴見中尉が落馬してからの“シャッシャッ走り”が出てくるが、マンガを忠実に再現しているだけでなく、鶴見中尉の執念深さと身体能力をアクションで表現するという意味でも非常に映画的だ。

ただ、この馬橇チェイスが実質的にクライマックスとなり、その後は杉本の回想シーンをたっぷり描いてエンディングとなってしまう。

全部で314話ある原作の20話分ほど、単行本で3巻にも満たないボリュームなので、まるで長編ドラマの初回2時間スペシャルだけを見せられたような気持ちになる。

ラストでちらっと重要人物たちが登場し、続編やシリーズ化も示唆されているが、原作ではこの先はさらにヤバめなキャラが次々と登場するので、また違った意味で映画化は難しそうだ。

これまでのマンガ実写化作品に原作愛のない作品が多かったせいか、いまやその「再現度」が評価の基準となっている面がある。

ただ、一本の映画として観た場合、そこだけで判断するのもちょっと違うのではないか。

映画版ならではの大胆な脚色やテーマの解釈があってもいいのでは…などと考えてしまうが、とりあえずは原作ファンに受け入れられる形で、無事に完成・公開された作品に対してありがたくヒンナ(アイヌ語で感謝の意)しておこう。

(文・灸 怜太)

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