“あの間取り”の立体化がもたらす違和感
原作ファン待望の“あの間取り”の立体化を実現した「変な家に実際に足を踏み入れる展開」だが、原作ファンががっかりしている原因もこの「変な家に実際に足を踏み入れる展開」にあるように感じる。変な家に「行けちゃった」ことで、推理するまでもなく違和感に気づけてしまっている。
原作がミステリー強めのミステリーホラーだとしたら、映画はホラー強めのミステリーホラー。間取り図を見ながらその背景を推理するミステリーではなく、間取り図の変な家に行ってみるホラーに改変されているのだ。
それによってカットされたエピソードも多数あり、代表的なのが原作版で3つ目に登場する日本家屋で起きた「よっちゃん仏壇転落事故」。
相談者の女性が「本家の仏壇の前で従兄弟の洋一が死んでいた」ことを思い出すシーンだ。本来ならそこから、建物の違和感の謎が解けていくのだが映画版では丸々カットされている。
カットの理由は簡単で、実際に建物に入れたから。主人公の設定をYouTuberに変えたことで、「間取りの家に直接行って中に入ってみる」というフットワークの軽さが成立してしまう。実際に見て触れるからこそ、過去の出来事を紐解かずとも違和感に気づけるし謎も解ける。
だからこそ、原作では取材者に過ぎなかった主人公は、クライマックスに「呪われた一族や風習vs主人公たち」という、分かりやすいピンチを味わうことができたのだろう。