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殺しの博覧会ー脚本の魅力

北野武監督作「ソナチネ」のワンシーン
北野武監督ソナチネのワンシーンGetty Images

本作の魅力といえば、なんといっても殺し方のバリエーションの多さが挙げられるだろう。脚本の執筆にあたっては、はじめに登場人物の死に方を考え、その後に肉付けをしていったという北野。医療用のドリルで口の中をかき回したり、カッターで指を詰めさせたり、耳に菜箸を突っ込んだりといった残虐な殺し方の数々は、思わず顔を背けてしまいたくなる。

とりわけ恐ろしいのは、大友組の若頭、水野(椎名桔平)の最期だ。ウォーターフロントに呼び出された水野は、ロープで首と車止めをくくりつけられた状態で車の助手席に乗せられる。そして、車が急発進すると、彼の身体は車外に勢いよく放り出される。顔にマスクをかけられたまま「首ちょんぱ」状態で放置された彼の遺体は、なんとも無惨だ。

そして、ヤクザ映画ならではの裏切りや権力争い、そして、「ぼったくり」を巡るささやかな問題をきっかけに巨大な抗争へと発展していく面白さも、本作の大きな魅力だ。

特に印象的なシーンは、池元組若頭の小沢を粛清するシーンだろう。山王会の会長である関内の別荘に呼ばれた小沢は、関内が見守る中、山王会若頭の加藤に銃で暗殺される。と、続いて加藤は、手を叩いて笑う関内に向き直り、側近もろとも関内を殺害してしまう。

なお、この裏切りのシーンでは、近くの砂浜でバーベキューをしている部下たちの姿も描かれている。彼らは、小沢の銃声については歯牙にもかけないが、続いて2発、3発と銃声の音を聞くうちに異変を察知し、別荘に駆けつける。銃声の回数だけで事件を察知させるという演出は、説明を嫌う北野らしい語り口だ。

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