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主役級の役者たちの演技合戦ー配役の魅力

加瀬亮
加瀬亮Getty images

本作の最大の魅力は、従来の北野映画には見られない豪華な俳優陣だろう。従来の北野映画は、寺島進や大杉漣、渡辺哲といったお気に入りの役者(いわゆる「北野組」)やたけし軍団の面々が出演することが多く、著名な役者の起用はそれほど多くはなかった。

一方、本作の場合は、ほぼ全ての役者が北野映画初参加で、しかも三浦友和や椎名桔平など、すでに主役級の役者が多くキャスティングされている。そのため、本作全体が、一線級の役者たちの演技合戦の様相を呈している。

また、北野映画の醍醐味でもある「意表をついたキャスティング」も、本作の魅力の一つだろう。従来、北野作品では、『3-4×10月』(1990年)の豊川悦司や『ソナチネ』の逗子とんぼ、『キッズ・リターン』の下條正巳など、強面ではない役者をヤクザ役に起用することで、独特のリアリティを演出してきた。

こういったキャスティングの妙は本作にも引き継がれており、加藤役の三浦友和や片岡役の小日向文世や関口会長役の北村総一朗など、善人を演じることが多い役者が怒号を飛ばし合う様子には、妙な味わいが感じられる。

中でも特筆すべきは、石原役の加瀬亮だろう。『それでもボクはやってない』(2007年)や『重力ピエロ』(2009年)などでの素朴な青年役が印象に残る加瀬だが、本作では冷酷なインテリヤクザを好演している。

なお、加瀬は、北野武最新作である『首』(2023年)でも、狂気に満ちた織田信長を演じており、『アウトレイジ』への出演で役者として一皮剥けたといえるかもしれない。

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