群像劇ならではの個性あふれるキャラクターたち〜演技の魅力
本作は群像劇だけに、役者陣がみな生き生きとした演技を見せている。まずは、主演の加瀬亮。本作で役者として大きく飛躍した感のある加瀬だが、理不尽な状況に振り回されながらも戦い続ける男を静かに、ときに熱く演じている。
金子を支える二人の弁護士・荒川役の役所広司と須藤役の瀬戸朝香の演技も注目。それぞれの信念を持ちながら、裁判官と争う弁護士を演じている。
また、検察の新崎役の尾美としのりや、看守の西村役の徳井優など、金子たちの「敵」も実に魅力的に描かれている。特に、“ラスボス”の裁判官・室山役の小日向文世の演技は流石。穏やかな口調で物分かり良さそうでありながらも目は全く笑っていない、そんな裁判官・室山を淡々と演じきっている(とは言っても、私情を挟まずに審理を行っているから冷酷に見えるのだが)。
一方、「敵」側にいながらも、例外的なのが、裁判官・大森役の正名僕蔵だろう。恐らく彼の素に近い役のようにも思われるが、「疑わしきは罰せず」という大原則に立ち、金子たちにも温情ある審理を行っている。もし小日向と正名の役が逆だったらどうなっていたか…。そんな妄想に思いを巡らせてみるのも面白いかもしれない。