重力を無視した斬新なアクションシーン〜映像の魅力
本作では、時間や空間を超越した斬新なアクションが多数散見される。
一番の見どころは、なんといっても香港映画仕込みのワイヤーアクションだろう。本作では、香港のカンフー映画の第一人者ユエン・ウーピンをアクション・コレオグラファーに据え、宙に浮いた状態で繰り出す「無影脚」などのカンフー映画のアクションを巧みに取り入れている。
また、「マトリックス避け」のシーンでも使用された「バレットタイム」にも注目。「バレットタイム」とは、被写体の周囲に無数のスチールカメラを配置し、順番に連続撮影するというもので、被写体の動きはスローモーションながら、カメラワークが高速で移動するという効果が得られる。
本手法は、元来「タイムスライス」や「フローズンタイム」と呼ばれ、古くから存在していたが、実用には至らなかった。本作の視覚効果スーパーバイザーのジョン・ゲイターは、特殊視覚効果カンパニーのマネックス・ビジュアルエフェクトの力を借り、これを実用化。撮影では、120台ものカメラが駆使されたという。
なお、本作が公開された1999年は、カメラがフィルムからデジタルに移り変わる転換期にあたる。そういった点で、本作は、技術の進化が人間のアイデアに追いついたことを示す作品だと言えるかもしれない。