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観客の視線をコントロールすることで高い没入感を実現~映像の魅力~

本作の映像には、「シネマスコープ」と呼ばれる横長の画面が効果的に生かされている。例えば、本作の特報でも使われた、車窓からゴジラを見上げる映像では、車の移動とともに、ゴジラの体が相対的に左から右へ移動し、観客の目線も左から右へ誘導される。画面を狭めることで観客の視線を集中させ、高い没入感を生み出している。

また、シネマスコープサイズの映像は、「集合体」の表現を可能とする。例えば、空撮で街を移した映像では、観客の視線は奥から手前へ誘導され、さらにテロップで手前に誘導される。この誘導により、雑多な建物が立ち並ぶ街並みを一つの街という「集合体」として提示できるわけである。特に注目は、総理大臣の記者会見のシーン。記者たちがカタカタとPCのキーボードを打つ様子を横から捉えたカットでは、まるで彼らの手が一つの生き物であるかのように思えてくる。

もう一つ、テレビやネットなどの現代的なモチーフを入れ込んだ映像にも触れておこう。とりわけ冒頭のスマートフォンで撮影されたゴジラの襲来のシーンには、撮影者の身体性が刻印され、かなり臨場感あるシーンに仕上がっている。また、ニコニコ生放送の中継や、避難情報を入れ込んだTVの映像もリアルで、東日本大震災時のメディアの状況を彷彿とさせる。

なお、本作の構想段階では、すべての映像をニュース画像や報道映像などで構成し、ゴジラとの対決に予算を投下する案もあったという。結果的にこういった映像は一部の使用にとどまったが、庵野がやりたかった案は、どちらかというとこういうものだったのかもしれない。

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