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『新世紀 エヴァンゲリオン』のために作った曲を使用~音楽の魅力~

本作の音楽を担当するのは、鷺巣詩郎。『新世紀 エヴァンゲリオン』でおなじみの作曲家である。監督の庵野は、本作の作曲にあたり、ゴジラの作曲家である伊福部昭の曲をそのまま使用。加えて、自らが『新世紀 エヴァンゲリオン』用に作曲した曲も使用されている。

音楽はオリジナル版の『ゴジラ』(1954)の楽曲が一部使用されている
音楽はオリジナル版のゴジラ1954の楽曲が一部使用されているGetty Images

具体的に映画の流れに沿って説明しよう。まず、ゴジラが東京の街を蹂躙する前半で奏でられるのは、観客の絶望感を喚起する宗教曲風の楽曲。加えて、『新世紀 エヴァンゲリオン』の「ヤシマ作戦」(第5使徒ラミエルに対抗する第三新東京市を巻き込んだ一大作戦)で使われた楽曲「Decisive Battle」を編曲した「EM20」も奏でられる。ティンパニーによる変拍子が観客の不安とアドレナリンを掻き立てる。

そして後半、内閣総理大臣の死をきっかけに人類による反撃がはじまると、音楽は一転。起死回生の「ヤシオリ作戦」では、伊福部の「宇宙大戦争マーチ」が意気揚々と奏でられる。無人在来線爆弾が投入され、コンクリートポンプ車や特殊建機が大活躍。物語が一気に大団円に向かっていく。

なお、ゴジラといえば、誰もがあの伊福部のおどろおどろしい音楽を思い浮かべることだろう。鷲巣は、この「ゴジラのテーマ」を作中で使用するにあたり、イギリス・ロンドンまでわざわざ足を運び、伊福部の旧音そっくりにステレオ録音したという。しかし、庵野は結局そのステレオ録音を使わず、オリジナルとなるモノラル録音を使った。庵野の監督としてのこだわりが垣間見えるエピソードである。

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