誰の存在とも紐づいていない最恐の幽霊を描く〜演出の魅力
本作は、WOWOW制作による「J・MOVIE・WARS3」の一作で、『リング』シリーズの監督で知られる中田秀夫の劇場デビュー作。脚本は『霊的ボリシェヴィキ』の高橋洋が務めている。
ジャパニーズ・ホラーの旗手として知られる中田と高橋が初めてタッグを組んだことから、ジャパニーズ・ホラーの先駆的作品として名高い本作。高橋は、本作の原点として、幼い頃に見たある海外のホラー映画を挙げている。『シェラ・デ・コブレの幽霊』がそれである。この作品は、あまりの恐ろしさに上映中止となった作品としても知られ、近年では『探偵!ナイトスクープ』で取り上げられたことでも記憶に新しい。
そんな本作の特徴は、なんといっても「実在しない架空の幽霊が登場する」ことだろう。本作の主人公・村井は、過去の映画の未現像のフィルムに上から撮影してしまい、それ以来、幽霊の存在に悩まされる。プロデューサーによると、この過去の映画は架空の女性が登場するサスペンスドラマであり、撮影では、架空の女性が幽霊として現れるようになったという。
つまり、『女優霊』とは、「女優の幽霊」ではなく、「女優が生み出した幽霊」なのである。初めから実在せず、誰の存在とも紐づいていない幽霊…。これほど恐ろしい存在がこの世にあるだろうか。