観客の恐怖を煽る「メタシネマ」の構成〜脚本の魅力
本作の筋は、『アメリカの夜』や『カメラを止めるな!』と同じように、映画撮影をテーマとした「メタシネマ」である。では、「メタシネマ」の特筆すべき点は一体何か。それは、「映画内映画」を作中で何度も反復できることにある。
例えば、村井たちスタッフが、試写室で映画のラッシュを見ているシーンでは、村井たちが撮影したラッシュが途中で過去の映画の無音のフィルムに切り替わる。映っているのは、バストショットで、切々と何かを訴えかけている女性。このとき、女性の背後には、確証はできないものの、「黒と白からできた何か」が映っている。
その後、カットが変わると、これが幽霊であったことが明示されるのだが、ピントが合っていないためまだ幽霊であると確証はできず、ただ「おぞましい何か」が映っているとしか言えない。現に、村井がこの「何か」が女性の幽霊であることに気づくのは、試写の後、編集室で一人で確認しているときである。
1度目の上映の際は幽霊の存在をほのめかすに留め、2度目にそれが幽霊であると断定する。「おぞましい何か」が映っている映像が作中で咀嚼され、徐々にその正体が明らかになっていく過程が、観客の恐怖を煽るのである。