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武満徹のレクイエム―音楽の魅力

(左)ジョージ・ルーカス(中)黒澤明(右)スティーブン・スピルバーグ【Getty images】
左ジョージルーカス中黒澤明右スティーブンスピルバーグGetty images

本作の音楽を手がけた武満徹は、戦後の日本を代表する前衛作曲家。琵琶や尺八といった和楽器を取り入れたオーケストラ「ノヴェンバー・ステップス」で一躍「世界のタケミツ」となった人物として知られている。

そんな武満が黒澤映画の音楽を担当するのは、『どですかでん』以来15年ぶり。『どですかでん』では、温かなメロディーで貧しくも精一杯生きる人々の生活を描いていたが、本作では一転、マーラーの交響曲を思わせる重厚なレクイエムを提供している。

特に印象的なのは、中盤の合戦シーンだろう。斃れた武士たちの骸が延々と映し出されるこのシーンでは、戦の喧騒が消え、レクイエムだけが再生される。オーケストラの荘厳な音色に混ざって流れる銅鑼や尺八の音色はなんともおどろおどろしく、戦国の世の恐ろしさをこれでもかと際立させている。

また、音楽といえば、鶴丸が演奏する篠笛のおどろおどろしい音色も忘れてはならない。このシーンは、家族を殺害された鶴丸が、理性を失った秀虎を驚かせるシーンだが、彼の積年の復讐心を音楽で見事に表現している。

なお、武満はサウンドトラックの制作中に意見が合わずに激しく対立。黒澤は録音済みのテープに何度もダメ出しし、武満側も音楽を勝手に修正する黒澤に怒りを抑えきれず、自分の名前をスタッフクレジットから外すようにお願いしたという。

その後、武満は、プロデューサーの原正人の取りなしにより黒澤と和解したものの、1993年に逝去。黒澤との作品は本作が最後になってしまった。

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