改悪点④:改善か?改悪か? 稀咲鉄太は、結局何者なの?
稀咲鉄太とは、元「メビウス」の幹部として登場し、パーちんを無罪にするという条件でマイキーの心に付け入り、東京卍會参番隊隊長になる男のこと。その後、持ち前の知略を活かして出世し、未来では組織のNo.2にまでのし上がる姿が描かれる。原作屈指の敵役である。映画版では間宮祥太朗が演じた。
そんな稀咲は、映画序盤、10年後の世界で大人になった姿で少しだけ登場する。そして「佐野万次郎(マイキー)、東京卍會のトップ。東卍の最重要人物の稀咲鉄太。この2人が出会わなければ、今の東京卍會は存在しなかった」という情報が明かされる。
要するにこの物語の黒幕であり、この10年間、暗躍していたことを示唆する形で登場するわけだ。しかし、今作では、稀咲が何をしたのかまでは、明かされない。言ってみれば、続編ありきで登場したキャラクターなのである。見方を変えると、序盤のうちは、何がしたいのかわからない、謎めいた存在として描かれるという点で、原作に忠実であるとも言える。
しかし、上述したように、パーちんを無罪にすることをマイキーに提案し、後に利用するのが、稀咲なのだ。したがって、パーちんの逮捕というイベントをごっそり省略した上で、稀咲の行動を続編でどのように位置付けるのか、という疑問が生じる。回想シーンとして持ってくるのか、それともなかったことにするのか?
また、原作にはないシーンとして、『86抗争』にバイクで駆けつけるマイキーを稀咲が待ち伏せし、「誰だ、てめえ…?」と言われるシーンが一瞬だけ描かれる。
これは「続編で黒幕としてフィーチャーする稀咲の印象を残しておきたい」という、制作側が意図した原作からの「改善」ポイントなのだろうが、ここにも「待った!」をかけたい。
なぜなら、稀咲をこのような形でマイキーの前に出現させることは、後の稀咲の行動にとって、プラスにはならないからだ。策略家の稀咲が、わざわざ、この時点でそんなアプローチをするわけがない。なので、これも「改悪」とみなしたい。
以上を含め、この作品における稀咲の存在意義が、イマイチよくわからないまま、映画『東京リベンジャーズ』は終了しているのだ。
他にも、改変点は色々とあり、本来登場し、後に人気を博す重要キャラクターたちが今作の終盤に登場しなかったのは、むしろ、続編での補足が期待される。
今回は、原作ファンの立場から、「ここは改悪点では?」と思えるポイントを目ざとく指摘してきたが、そんな筆者も続編が公開される折には、万難を排して劇場に駆け付けるだろう。何より、本作が理屈抜きで楽しめるヤンキーファンタジー映画であるということは衆目の認めるところ。大らかな心で改変点を受け入れつつ、原作との違いに細かいツッコミを入れていくのも、乙な楽しみ方かもしれない。
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