アニメーション界の俊英、細田守の集大成ー演出の魅力
『サマーウォーズ』(2009)『おおかみこどもの雨と雪』(2012)で知られるアニメーション監督、細田守による6作目の長編アニメーション作品。主人公すず役をシンガーソングライターの中村佳穂が演じている。
「細田守作品の集大成」と謳われる本作には、従来の細田作品に見られる2つの要素が描出されている。1つは「ケモノ」、もう1つは「サイバースペース」だ。
はじめに前者について。『バケモノの子』や『おおかみこどもの雨と雪』など、これまでの細田作品には必ずと言っていいほど「ケモノ」が登場しており、マスコット的な人気を誇ってきた。細田自身、ディズニー映画『美女と野獣』(1991)をモチーフにしたと語る本作では、ケモノの姿をしたアバターたちに混ざって、社会から排除された悲しいケモノ、竜が登場する。
続いて後者について。これまで細田は、『デジタルアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000)や『サマーウォーズ』などで、現実空間と仮想空間との往還を描いてきた。本作では、巨大な仮想空間「U」を舞台にアバターとなったすずが、現実世界で虐待を受けるケイを救う。
なお、細田は、インターネットを題材とすることについて、「インターネットそのものが変わってきている今、肯定的な未来に通じるような映画を作れないか考えてきた」と語っている。SNSやメタバースが全盛の現代、細田の作品は、インターネットの未来を指し示す指標なのかもしれない。