非本業声優の凄みー配役の魅力
本作には、ミュージシャンをはじめ、数多くの非本業声優が出演している。
まず挙げるべきは、すず・ベル役の中村佳穂だ。本作が演技初体験だという中村だが、専業声優にはない初々しさやぎこちなさがむしろ心を開かないすずの心情を表現している。
細田は当初、すず役とベル役は同一人物が演じることを絶対条件に挙げていたが、圧倒的な歌唱力と演技力の双方を持った人間に出会うのは不可能とも考えていたという。しかし、中村の演技力に圧倒され起用を決めたとのこと。
また、演技未経験の声優といえば、もう1人すずの親友であるヒロカ役の幾田りらが挙げられるだろう。YOASOBIのボーカルとして知られる幾田だが、本作ではとても初めてとは思えない堂に入った演技を披露している。そして、竜役の佐藤健も、ささやくような落ち着いた声の中に心の傷をにじませる見事な演技を披露している。
なお、すずの活躍を陰ながら見守る合唱隊を演じるのは、森山良子、清水ミチコ、坂本冬美、岩崎良美、中尾幸世の5人。じつに豪華な5人だが、劇中では見事なアンサンブルを見せている。