現在の世界情勢
そして日本が今置かれる状況を改めて考えさせられる本作
劇中で、日本政府側は「力がなくては話し合いができない」「力あっての国家」といった会話が飛び交い、敵が核を保有しているかもしれない状態での攻撃は、結局のところ威嚇しかできない弱さを詳らかにし、米国側にも“世界の警察”と呼ばれた頃の強さはなく、たった1隻の潜水艦すら沈めることができない。それが今の世界だという海江田なりの皮肉を見せつけている。
翻って、現実の社会情勢を考えてみると、現在、ロシアによるウクライナ侵攻では、プーチン大統領が核の使用を示唆し始めている。北朝鮮もイランも核武装によって主権をかろうじて維持している。様々な国際問題が同時に起きているこの時代に、本作は強烈なメッセージを突き付けているのではないだろうか。
我々日本人はどうだろうか。ロシアによるウクライナ侵攻について関心を持っている人は多いだろう。しかし、そのほとんどは、海の向こうに暮らす人々の生命に寄り添うようにして問題と向き合うのではなく、「光熱費や生活必需品の価格に影響する」などといった日常生活に意識を向けがちだ。
現実として、日本は非核三原則に縛られ、敵国から攻撃されても専守防衛しかできない。北朝鮮が日本海に向けてミサイルを撃ち込み、国連安保理の常任理事国であるロシアが核使用をチラつかせて領土拡大のためにウクライナに侵攻している今、日本は国をどうやって守るべきだろうか。本作を観ていると、つい現実の問題に思考を巡らせてしまう。