「高良健吾さんは直観的に理解してくださった」映画『罪と悪』齊藤勇起監督単独インタビュー。映画デビュー作を語る
text by タナカシカ
井筒和幸監督、岩井俊二監督、廣木隆一監督らの助監督を務めた齊藤勇起の初監督作品『罪と悪』が2024年2月2日(金)から公開される。今回は、名だたる名匠もとで研鑽を積んだ齊藤勇起監督に、オリジナル脚本に込めた思いや現場の裏話に至るまで、丁寧に語っていただいた。(取材・文:タナカシカ)
「デビュー作は自分自身の話で勝負したかった」
『“罪”=“悪”なのか?』というテーマについて
―――試写を拝見させていただきました。3人の登場人物の運命が数奇に絡みあう壮大な作品だと思いました。本作は齊藤監督の初監督作にしてオリジナル作品になります。まずは、脚本作りの出発点についてお聞き出来ればと思います。
「脚本を作るにあたり、長年自分の中でもっていた『“罪”=“悪”なのか?』という疑問をテーマに据えました。自分の人生を振り返ったときに、そうした疑問に駆られる経験が少年期・青年期でいくつもあったんですよ。
例えば、あからさまな依怙贔屓とか、機嫌によって態度が変わる人が周囲にいたりして。疑問に思ったことを大人に聞いたりすると、うやむやにされることもありましたし。作中でも『この町の大人は顔色気にしてばっかりで当てになんねえ』というセリフがありますが、子供の頃に感じた、不条理とか不平等とか、納得できないことなんかが、この題材を考えるきっかけになったんだと思います」
―――本作には監督の実体験が盛り込まれているのですね。
「そうですね。デビュー作だけは自分自身の話で勝負してみようと思ったんです。過去のエピソードを羅列していって、そこからキャラクターを作って。少年期から脚本を書き起こしていきました。
とはいえ、初稿はまったく違う構成だったんですよ。少年期じゃなくて大人編から始まり、『子どもの頃、お前らああだったよな』といった会話が交わされる中、随所で過去の描写が挟み込まれていく。そんなパターンだったんです。でも、それだとありきたりなので、中学時代の話から始める構成に変えました」