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「実は現場で一度だけ相米さんの真似をした」
役者から最良の演技を引き出すために

©2023 映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』製作委員会
©2023 映画PLAY ~勝つとか負けるとかはどーでもよくて~製作委員会

―――先日、亘役の小倉史也さんにもインタビューさせていただいたのですが、パーマをかけることなど、小倉さん発のアイデアも採用されたとのことですね。小倉さんとのお仕事はいかがでしたか?

「めちゃめちゃ楽しかったですね。彼には2つの面があって、自分の役はこうだってはっきり決めてそれを表現するためのアプローチを考え抜く面とアドリブを重視する面。鈴鹿君が写真を撮りに来て、パッパッってポーズをとる場面、あれその場のアドリブなんですよ。2人とも完璧に合わせて。ああいう風に体が動く面も素晴らしくて、凄く良い俳優だなと思いました」

―――小倉さんのお話で印象的だったのが、3人が初めてリアルで対面する屋上のシーンで、小倉さんのジャケットの裏地がキラキラ光っている。あれは脚本には書かれていなかったとのことでした。

「あー、そうだったと思います」

―――古厩監督が衣装部さんにあのようなジャケットを発注されたのでしょうか?

「亘はお金持ちの設定なので、羽織っているダウンジャケットを、アウトドアブランドの中でもハイブランドのものにしてほしいと言って。それで持ってきてくれたダウンの裏地が金色だったんですよ。じゃあそれでいこうと。ちなみに亘が部屋で着ているジャージも、イヴ・サンローランのものなんです、実は(笑)」

―――もう一度映画が観たくなるお話です(笑)。屋上のシーンでは小倉さんが衣装の特徴を生かしたお芝居をなさり、奥平さんがそれを受けて反応する。幸福な化学反応がこのシーンには記録されていると思いました。

「面白かったですね。映画の現場ってそういうのが楽しいですよね」

―――古厩監督が影響を受けたと公言されている相米慎二監督も、スタッフやキャストが自発的にひねり出したアイデアを尊重する映画作家の一人です。相米監督の映画からの影響は今でもあるのでしょうか?

「昔はもっと真似していました。ああいう風にやってみたいなって思ってやっていたんですけど、まー、体力がいるじゃないですか。『もう1回。もう1回』とテストを繰り返して」

―――時代がなせる業でもありますよね。

「はい。ちょっと向いてないなと思って。実は現場で一度だけ相米さんの真似をして『もう1回』って言ったことがあるんですよ。でもその2分後に『えっとね、さっきは』ってスタンスを翻して…ビビりだから出来なかった(笑)。

でも、ああやって役者が自分で生み出すまでじっと待つなんて凄いですよね。やりたいけど僕は出来ないから、最近ではテストもやらないで、『ほれっ』って感じで本番に入ると、飽きずにやってくれるというか」

―――相米監督とは別のアプローチで役者から自発性を引き出そうとされているのですね。

「そうですね。今はそういう風にしています。相米さんの演出はとてもじゃないけど無理だ」

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