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「勝つでも負けるでもなく、遊ぶ」
最後のセリフに込めたメッセージ

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――古厩監督は、キャリアを通じて、多くの作品で10代の若者をお撮りになっていますが、時代によって若者のあり方は移り変わると思うんですね。でも、古厩監督の映画を観ると、今の若者が映っているなといつも思います。時代に則した若者の“ノリ”を映画に定着させる上で、意識されていることはありますか?

「僕、オヤジなので、あんまり『こうしろ』って言わないようにはしています。役者がどっちから入って、どっちに出るみたいな、大まかな動きだけ決めて、あとは『やって』って言うと自分たちのノリを出してくれる。また、テストもしないでパパっと撮るとノリが映る。それは大事なことですよね。あんまりこっちがやりたいようにすると、映画にとって大事なノリがどっかに行っちゃうんで」

―――今おっしゃったことは、キャリアのどこかのタイミングで気づかれたのでしょうか?

「そうだと思います。どっかで気づいたんだな。さっきの相米さんの話に通じるんですけど、俺の場合、リハーサルを何度も繰り返すとなんかつまらなくなっちゃうって思いました。

もちろん、100回リハーサルを繰り返した先に生まれる101回目の芝居が素晴らしいのはわかるけど、性格的にそこまで待てないし、役者も1回出したノリを繰り返そうと思うと2回目は再現しようと思って違うものになってしまう。どういう演出が自分に合っているのかなと考えて、自然に出てきたんだと思います」

―――映画の最後、タイトルに関わるとあるセリフを達郎が口にしますが、私はそれを聞いて号泣してしまいました。特に翔太にとってeスポーツは現実逃避の手段にも見えます。そうした背景を踏まえると、様々な含みを持ったセリフだと思いました。ラストシーンはどういう想いでお撮りになりましたか?

「お客さんに何を持ち帰ってもらおうと考えた時に、勝つでも負けるでもなく、遊ぶっていうこと。遊び場というものを自分たちで持つんだっていう意志、それがあれば生きていけるんじゃないかと思ったんですよね。

達郎や翔太の日常は、今、日本のどこにでも溢れているわけで、『この日常から脱出できるよ』といったことは絶対に言わせないようにしようと。そこから出てきた最後の言葉ですね。もうこれはセリフで言っちゃおうと思って」

―――シンプルな言葉なんですけど、色んな含みを孕んでいますよね。達郎、翔太、亘は、3人それぞれ個性も異なりますし、出来事に対する反応も違ったりするんですけど、束の間、一つの感情を共有する。そんな奇跡のような瞬間を魅力的にお撮りになっていて、素晴らしいラストシーンだと思いました。

「ありがとうございます。実は、本来のラストはあそこじゃなくて、駅で別れるシーンだったんです。でも、その前の東京のシーンでこの映画は終わっていいなと思って。駅のシーンはエンドロールにちょっと使いました」

―――エンドロールまで必見ですね。本日はありがとうございました。

(取材・文:山田剛志)

【作品情報】
出演:奥平大兼、鈴鹿央士、山下リオ、小倉史也、花瀬琴音、斉藤陽一郎、唯野未歩子、冨樫 真、山田キヌヲ、三浦誠己
監督:古厩智之
脚本:櫻井 剛
主題歌:Cody・Lee(李)「イエロー」(Ki/oon Music)
制作プロダクション:ザフール
配給・宣伝:ハピネットファントム・スタジオ
製作:サードウェーブ ハピネットファントム・スタジオ
©2023映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』製作委員会
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