カンパーバッチの繊細な演技に注目〜配役の魅力
配役の魅力と言えば、何といってもフィル役のベネディクト・カンバーバッチだろう。傍若無人にふるまい、当初は「男らしさ」をまとっているフィル。冷静に考えればかなりイヤな奴だが、話が進むにつれ、徐々に自らの内面の弱さを見せていく。支配者の傲岸不遜さと冷酷さ、そして内にある脆さ。さまざまな感情が渦巻く複雑な内面を、カンパーバッチは繊細に演じ切っている。
なお、カンバーバッチはフィルを演じるにあたり、撮影現場で共演者たちとあえて距離を取ったり、体に悪臭を染みつかせるために風呂に入らなかったりと徹底した役作りを敢行。ヘビースモーカーであるフィルを模倣した結果、3回も“ニコチン中毒”に陥ってしまったという。
また、ピーター役のコディ・スミット=マクフィーの演技にも注目。中性的でひょろっとした出で立ちと繊細な性格で骨太のカウボーイの社会では異彩を放つ彼だが、徐々に内に秘めた残虐性が見えはじめ、観客をぞっとさせる。なお、マクフィーは子役出身の俳優で、『ぼくのエリ 200歳の少女』のハリウッドリメイク版『モールス』(2010年)では主役を務めるなど、世界的に注目を集めている人物である。
そして、ローズ役のキルステイン・ダンストとジョージ役のジェシー・プレモンスも、本作の良心として、的確な演技で作品に花を添えている。なお、テレビシリーズ『FARGO ファーゴ』シーズン2でも共演している二人は、その後、実生活でもパートナーとなっている。