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主役はあくまで映像美。オブジェのような役者たち~配役の寸評~

本作にはいわゆるハリウッドスターや名優は1人も出演していない。主役のボーマン船長を演じるキア・デュリアは、その後も数々の映画に出演しているが、メインアクトを任される機会は少なく、決して華のあるタイプの役者ではない。また、ヘルメットを被ったまま芝居をするシーンが多く、感情が高ぶる場面も少ないため、芝居のトーンは控え目である。

映画『2001年宇宙の旅』の1シーン。主演のキア・デュリア
映画2001年宇宙の旅の1シーン主演のキアデュリアGetty Images

その上、無重力空間が舞台となっているため、アクション面では「不自由さ」や「ぎこちなさ」が強調されている。こうした、役者の演技に関する一見ネガティブな印象は、作品のコンセプトと深く関わっている。主役にあえて地味な役者を配し、派手な演技をさせず、抑制されたトーンを保つことによって、観客は驚異的な映像の数々を純粋な気持ちで眺めることができるのだ。

一方、カナダ人俳優・ダグラス・レインが声優を務めた「HAL(ハル)9000型コンピュータ」の声は、一度聞いたら忘れられないほどの個性を発揮している。レインが駆使するカナダ英語は、アメリカ英語とイギリス英語、それぞれの要素がブレンドされたニュートラルな響きを持ち、無機質なコンピュータの声を見事に表現している。

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