ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 女性の心にぶっ刺さる…。憎しみ合う母と娘を描いた韓国映画『同じ下着を着るふたりの女』は面白い? 忖度なしガチレビュー » Page 2

幅広い世代の女性から熱烈な支持
監督は制作にあたり日本の書籍を参考に

本作のテーマはタイトルにはっきりと表れている。

冒頭、イジョンが洗った下着を、スギョンが濡れたまま履くシーンがある。何ともいたたまれないシーンだが、お互いを憎しみ合いながらも離れられない母と娘のどうしようもない関係性がはっきりと表れている。

本作では、相手をそんな母と娘の愛憎に満ちた一筋縄ではいかない関係性を、母の愛を求める娘と良母になりきれない母、双方のサイドから捉えている。

韓国では公開当時、幅広い世代の女性たちから切実な共感を集める本作。本作がここまで多くの人に刺さる作品となったのは、なんといっても監督のキム・セインが女性であることに尽きる。

彼女は、短編映画を制作しているうちに、相手を完全に憎むことも愛することもできないアイロニカルな関係を表現するために、韓国社会の母と娘に思い至ったと語っており、制作にあたっては精神科医の斎藤環氏の本や田房永子氏の漫画などの日本の書籍も参考にしたという。

なお、本作は、キムの韓国映画アカデミーの卒業制作(KAFA)であり、なんと彼女の長編デビュー作。

第26回釜山国際映画祭では、コンペ部門のニュー・カレンツ賞や女優賞、観客賞など、計5部門での受賞を達成し、以降もベルリン映画祭パノラマ部門や東京フィルメックスにも出品を重ね、世界の映画界から注目を集めている。

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