14歳の映像作家プレストン・ムタンガを起用
実験場としての映像表現に注目
前置きが長くなったが、絶賛された『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編にして、3部作の2作目に当たるのが、この『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』である。
本作では、その規模がスケールアップし、マルチバースに関する表現もさらに豊かになっている。タイトルの通り、マイルスはいくつもの宇宙を横断し、実に200体以上ものスパイダーマンが現れる。
登場人物たちと背景の描かれ方は、まさにカオス。グウェンの住む世界では、彼女の心理状態の反映なのか、淡く抽象的な背景になり、新しく登場したスパイダーパンク(ダニエル・カルーヤ)は、パンクバンドのアルバムジャケットがそのまま飛び出してきかのようだ。
さらには、レゴ、実写までもが混ぜられる。日本語版のポスターには、「敵は、全てのスパイダーマン」というキャッチコピーが書かれているが、マイルスが、膨大な種類のスパイダーマンたちから逃げるチェイスシーンは圧巻だ。
さまざまなスタイルの映像表現が混ざり合った本作は、表現の可能性を広げるための実験場のようでもある。
14歳の映像作家、プレストン・ムタンガが起用されたのは、そうした印象を強めるエピソードだろう。ムタンガは劇中のレゴシーンの一部を担当している。
製作と脚本を務めるフィル・ロードとクリス・ミラーは、レゴブロックと3Dモデル制作ツールを使ったムタンガのファンムービーを偶然見て、今回の起用を決めたそうだ。ファンダム(映画、漫画など特定の分野の熱心なファン)をも巻き込んで、『スパイダーバース』は進化していくのだ。