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時代の波に押し流されていくインディ
老いを強調したアクションが語るもの

©2023 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.
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『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』において、歴史や時間は重要なテーマだ。しかし、繰り返しになるが、筆者の目には、この映画自体がシリーズとハリソン・フォードの歴史を辿っているように見える。

もちろん、過去作を思い出させることで、スピルバーグの不在を強く感じさせもするだろう。しかし、今回メガホンを託されたジェームズ・マンゴールドは、『LOGAN/ローガン』(2017)で力を失い老い始めたスーパーヒーローとその最後の闘いを描いたように、今作でも、インディの老いを見事に表現している。

インディは、朝からうるさい隣の若者に腹を立て、学生たちに教える情熱はすっかり失せており、ベトナム戦争を背景にした社会運動や人類初の月面着陸などで変わりゆく世界に、置いていかれそうになっている。

同僚たちが、退官するインディにプレゼントを贈るシーンで流れる「イパネマの娘」は、このゆったりとした場面に合っているが、ボサノヴァは英語にするとNew Waveであり、インディを押し流す新しい時代の波を象徴しているようだ。

老いを強調する演出は他でも見られる。インディの代名詞である鞭を使ったアクションは、構えた後に一斉に銃撃されることで、時代遅れなものとして表現される。80歳になるフォードが激しく動けること自体には驚嘆するが、本作のインディは以前のような力強いヒーローではない。その身は長年の冒険を経てボロボロになっており、老体が発する痛みの辛さをヘレナに吐露する。

本作は、シリーズを通してインディが辿ってきた歴史と時間の重み、積み重ねられた肉体的、精神的な痛みを、感動的な仕方で見せながら終わる。もしシリーズ未体験の方がいたら、ぜひ一作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』を鑑賞した後で、この『運命のダイヤル』を観ていただきたい。

(文・島晃一)

【作品情報】
■原題:Indiana Jones and the DIAL OF DESTINY 
■監督: ジェームズ・マンゴールド(「フォードvsフェラーリ」、「LOGAN/ローガン」)
■製作:キャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル、サイモン・エマニュエル 
■製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス ■音楽:ジョン・ウィリアムズ
■出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス
ジョン・リス=デイヴィス、マッツ・ミケルセン
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
公式サイト

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