人間の業を肯定するような優しい眼差しー演出の魅力
本作は、『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985年)で高い評価を得たラッセ・ハルストレム監督作品。原作は、ピーター・ヘッジズの純文学『What’s Eating Gilbert Grape』で、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのジョニー・デップと『タイタニック』シリーズのレオナルド・ディカプリオが主演を務める。
デップとディカプリオ。言わずと知れた現代映画界の二大スターの共演作だけあって、どれほどの超大作なのかと期待する向きもあるかもしれない。しかし、あらすじからも分かるように、本作は決して派手な内容ではなく、家族の世話を一身に請け負う少年の葛藤を素朴なタッチで描いた心温まるヒューマンドラマに仕上がっている。
知的障がいを抱える弟・アーニーを演じたディカプリオは、若干19歳でアカデミー賞助演男優賞にノミネート。本作が、後のキャリアを大きく変える出世作となったのは言うまでもない。
閉塞感のある片田舎を舞台とし、家族の自死や障がいなど、深刻なトピックが散りばめられているが、映画のトーンは一貫して大らかなムードに包まれている。ギルバートが人妻と不倫をする場面では、部屋の窓から不倫相手の旦那がトランポリンで戯れている様子が映り、乾いた笑いをもたらす。
シリアスな題材を扱いながらも、随所でユーモアを交えることで、老若男女から愛される小品に仕上がっている。人間の業を肯定するような優しい眼差しといえば、北欧出身の名匠ラッセ・ハルストレムの専売特許。本作ではそうした彼の美質が見事に花開いている。