ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 何が足りない…? “有毒な男性性批判”に違和感を覚えるワケ。映画『バービー』徹底考察&レビュー。賛否両論のラストも解説 » Page 2

バービーたちの多様性は本当に肯定されているのか

©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
©2023 Warner Bros Ent All Rights Reserved

近年マテル社が推進する新事業の意義を強調しつつ、同時にその明らかな商業主義の欺瞞についても無自覚ではないことを示すため、映画はバービーランドの理想を、それとは真逆の男たちの価値観に支配された現実世界、さらにはケイト・マッキノン演じる映画オリジナルのウィアード・バービーの存在と対置することで、二重に相対化しようとする。

このアプローチは、あらゆる後ろめたさを反映しつつ、それでも完璧な体型の「白人美女」マーゴット・ロビーを主役とした物語を語ることを可能にする、よく練られたものであることは間違いない。しかし、定番バービーたる彼女を主役とする理由づけを念入りに行った結果、皮肉にもキャラクターとしての魅力が削がれてしまった感は否めない。また、そもそもバービーとケンを主役とする時点で避けられない限界ではあるものの、特に中盤までの展開は、男女の性別二元論をあまりにも強く意識させる保守的なものだ。

加えて、さまざまなバービーたちの多様性が果たして肯定されていたのか、にもやや疑問が残る。たとえば近年の『エターナルズ』(2021)は、ヒーローであるマッカリの聴覚障害を、その能力やプロットと特に関連させずに提示したことで、逆説的に障害を持ったヒーローが当たり前のように存在する世界観を示すことに成功していた。

1 2 3 4 5 6 7 8