コメント全⽂(敬称略・50⾳順)
伊東豊雄(建築家)
私は56年前、初めての海外旅⾏でアルヴァ・アアルトの建築を⾒るためにヘルシンキやユヴァスキュラを訪れた美しい森林の中から出現するアアルトの作品は、雲のように私を柔らかく包み込んでくれた。
⼆⼈の妻との⽣活を通して浮かび上がってくるアルヴァの⼈間としての優しさや温かさが、彼の作品を⽣む源泉であることをこの映画は美しく描いている。
⽯井佳苗(インテリアスタイリスト)
アアルトデザインのパイミオを初めてみた時の衝撃は忘れない。唯⼀無⼆の有機的な曲線、合板で作られ、病を癒す患者の為と知り感動を覚えた記憶がある。
この映画は、空撮によるダイナミックな建築の姿、それを取り巻く森も映し出し、建築とは⼈と⾃然の間で育まれるものと教えてくれる。
家具も同じアプローチだ。妻アイノとの⼿紙のやり取りは、アルテックのアートディレクターである前に妻という⼈間味溢れる感情のほとばしりを垣間⾒ることができる。
乾久美⼦(建築家)
なにより最近の建築ドキュメンタリーがいいのは、ドローンをつかった空撮で、思わぬ⾓度から名作を味わうことができる点だろう。
パイミオのサナトリウム、ムーラッツァロの実験住宅など、フィンランドの美しい環境との調和が素晴らしい。有名なタイルを使ったプレキャストコンクリート板の製造シーンなども貴重!
織⽥憲嗣 (椅⼦研究家、東海⼤学名誉教授)
アルヴァ・アアルトの椅⼦の想い出
私が初めてアアルトの椅⼦を⽬の当たりにしたのは18歳の時。⾼知県の⽚⽥舎から都会に出てきて、⽗親を輸⼊家具店〈湯川ヨーロッパランド〉に案内した際でした。
バーゲンセールをしていたコーナーでアアルトの肘に籐を巻いたアームチェア、そしてジョージ・ナカシマのコノイドチェアが、それぞれ3万円の札が付いていたのです。
当時、両親からの毎⽉の仕送りが7千円か1万円だったことを考えれば、その価格は信じられない⾼額でした。
アアルトやナカシマの名前は全く知らなかったものの、そのプロポーションの美しさに感動したことは昨⽇の様に鮮明に覚えています。
隈研吾(建築家)
モダニズム建築の巨匠と呼ばれるコルビュジエ、ミース、ライトと、アアルトの⼀番の違いは⼥性に対するスタンスではないかと、僕はうすうすと感じていた。コルビュジエ達は、⼀⾔でいえばマッチョであり、⼥性に対して抑圧的である。
それが原因になって様々のトラブルもかかえた。しかしアアルトのその妻アイノに対する尊敬、やさしさを、この映画で思い知った。それが、彼のデザインのやさしさとつながっているのである。
島塚絵⾥(テキスタイルデザイナー)
⼩さな⼈間という視点から設計し、それが街になり、社会の発展につながるという哲学に触れ、アアルト建築の魅⼒がすとんと腑に落ちました。
また、⽣涯をかけた仕事は、時を超えて語り継がれる壮⼤なプロジェクトであり、アイノとエリッサの存在が必要不可⽋でした。アアルト建築が今までと少し違って⾒えるような気がします。
下⽥結花(モダンリビング・ブランドディレクター)
朝⾷にアイノの器を使い、庭の花をアアルトベースに⽣ける、今の⾃分の暮らしの中で、デザインから伝わってくるこの「優しさ」はなんだろうといつも思っていた。
映画の中にその答えがあった。アルヴァとアイノとエリッサと。「アアルト」というブランドは、誰が⽋けては成り⽴たなかった。 仕事への愛、家族への愛、相⼿への愛ーーこれは、3⼈の3つの愛の物語だ。
⽥根剛(建築家)
建築家もひとりの⼈間であり、ある時代を⽣き抜いた⼈間としてのアアルト。
この映画では、深い森のフィンランドからアメリカで脚光を浴び、好奇⼼、才能、挑戦、理想、信仰、苦悩までのアアルトの旅路を描き、アアルトとアイノとの深い愛と情と慈しみの⾔葉は、冬の温かな暖炉のように⼼の奥に⼤切な⽕を灯してくれる。
平井千⾥⾺(SCOPE代表)
映画『アアルト』が、頭のなかにあった情報に沢⼭の背景を加えて物語のようにつなげてくれた。
アアルトのいた時代を覗き⾒しているようで楽しかったし、いくつか謎も解けたし、いくつか僕のなかに残っている⾔葉がある。でもそれは少しぼんやりしているから、もう⼀度⾒直して正しく覚えておきたい。
【書籍発売情報】
タイトル「アイノとアルヴァ アアルト書簡集」(草思社)
A5 判上製(4 ⾊)544P(予定)本体価格 6500 円
発売⽇:10⽉6⽇(⽊)
【作品情報】
邦題:アアルト 原題:AALTO
監督:ヴィルピ・スータリ(Virpi Suutari)
制作:2020年
配給:ドマ
2020年/フィンランド/103分/(C)Aalto Family (C)FI 2020 – Euphoria Film
公式HP:aaltofilm.com
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