作品に込められた既存の映画業界への問題意識
―――ちなみに、湖で泳ぐエヴァを撮影するシーンでは、難解な指示に業を煮やしたエヴァが逃げてしまうシーンがありますが、これは『いつか、どこかで』の撮影中で実際に起こったことなんでしょうか?
リム「これはフィクションですね。このシーンはラストの滝のシーンの再現ですが、トラブルは特にありませんでした」
―――なるほど、過去の出来事を完璧になぞっているわけではなくて、随所にフィクションが織り交ぜられているということなんですね。
リム「そうですね。ただ、撮影現場でのパワハラとか、映画業界で実際にあったことはもとにしています」
―――それは思いました。映画の舞台裏をテーマにした内幕モノはこれまでも沢山作られてきましたが、本作はキャストが映画の出来に満足せずオファーを断るといった幸福ではない場面が描かれています。その辺は意識されたんでしょうか?
リム「そうですね。本作の場合、キャストは映画のために身を捧げてくれているわけですが、作中のジェイは自分の作りたい映画のことしか考えていない。実際の撮影現場でも、キャストの気持ちを蔑ろにするからパワハラが起きたりするんです。
でも、実際出演した人たちは結構大変だったんですよね。例えばフェルディの場合は、家族とのトラブルを抱えているし、アデラも実は映画監督の道具にすぎないことに心を痛めていた。だから、そういうことを映画で表現したいなと思いました」
―――映画の内幕モノって、映画作りの楽しさだけを発信する作品が多いと思いますが、この作品は現場の実態がとても赤裸々に描かれていて、真摯な映画だと思いました。
リム「ありがとうございます」