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緊張と緩和を駆使した演出の魅力評

1972年に公開されると当時の全米興行収入を塗り替える大ヒットを飛ばし、第45回アカデミー賞では最優秀作品賞を受賞。監督のフランシス・フォード・コッポラは、豪華キャストと超一流のスタッフの力を結集させ、とあるマフィア一族の歴史を普遍的な神話に昇華し、後世に語り継がれる傑作を作り上げた。

偉業を可能にしたのは、奇をてらった演出ではなく、“緊張と緩和”を駆使したクラシカルな演出である。頭首であるヴィトー(マーロン・ブランド)が襲撃を受けるシーンでは、彼が露店で果物を買う穏やかな時間を踏み壊すように暗殺者が登場し、観る者を驚かせる。またこのシーンでは、短くキレのあるカット展開によってアクションそのものを躍動的に描くと同時に、気骨のない次男・フレドが慌てて拳銃を落としてしまう身振りをさりげなく入れ込むことで、的確な人物描写も行なっている。

“緊張と緩和”の演出が最大の効果を発揮するのは、ヴィトーの跡目を継いで頭首となったマイケル(アル・パチーノ)が姪の洗礼式に出席する場面と、彼の指示を受けたギャングによる裏切り者の粛清が交互に描かれるクライマックスだろう。「汝は悪魔を退けるか?」という神父の問いかけに対し、マイケルは「YES」と応え、その言葉を号令に血の気もよだつ虐殺シーンが展開されるのだ。

神聖な儀式と凄惨な虐殺をカットバック(異なる場所で同時に起きている場面を交互に描く手法)によって示すことで、暴力描写はおぞましさを増すとともに、ある種の崇高さをも獲得。残酷さと崇高さを同時に表現するクライマックスは、作品に神話的な骨格を与えることに成功している。

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