ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 映像の魅力
本作の息をのむほど美しい映像を撮り上げたのは、PTA組の常連カメラマン・ロバート・エルスウィット。横長のシネマスコープサイズを駆使して、未開拓なアメリカ西部の雰囲気を再現。黒煙を上げながら空漠とした荒野をひた走る蒸気機関車の運動、乾ききった土の感触、煤で汚れた空気の質感など、時代を形づくる細部がしっかりとフィルムに刻み込まれており、圧巻というほかない。
ところどころで、天から登場人物を見下ろす、俯瞰のカットが強い印象をもたらす。爆発事故の直後、ダニエルが耳の不調を訴える息子を抱きしめ、耳元で「聞こえるか?」と何度もささやく様子を捉えたカット、イーライを撲殺した直後、疲れ切ったように死体の傍で尻もちをつくカットが例として挙げられよう。前者のカットでは石油にまみれた人物、後者のカットでは血にまみれた人物が、ペアで捉えられている。
イーライの頭から血が流れ続ける後者のイメージは、地面から湧出する石油のイメージを蘇らせ、観る者を戦慄させる。一つ一つのカットに生き生きとした息吹を吹き込みつつ、類似したイメージを積み重ねることによって奥深い意味を醸成する本作の撮影は、アカデミー賞で最優秀撮影賞を受賞したのも納得の名撮影である。