ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 音楽の魅力
音楽監督を務めたのは、世界的ビッグバンド・レディオヘッドのギタリストであるジョニー・グリーンウッド。叙情的なメロディが印象的なレディオヘッドの楽曲とは一線を画す、弦楽器を用いたノイジーなサウンドを轟かせ、神をも恐れぬ強欲さの持ち主・ダニエル・プレインビューの一代記をややオーバーなタッチで彩っている。不協和音のループ、耳障りなノイズを全面的に取り入れたスタイルは実験的と言ってよく、観客によって好みがくっきり分かれそうだ。
ダニエルが最初に油脈を掘り起こす重要なシーンでは、悲鳴のようなヴァイオリンの音色が大音量で響き渡り、それによってシーンの臨場感がやや損なわれている。このシーンでは、ゆりかごに揺られるH・Wの鳴き声、石油を汲み上げる作業音など、豊かな音響世界が広がっているにもかかわらず、大仰な音楽が被さることによって、シーン全体が若干抽象的になってしまっている印象だ。
一方、ダニエルがイーライをボーリングのピンで撲殺する場面は、音楽が一切使われず、重い球体がフロアを転がる音、2人の叫び声と激しい呼吸音が強調されることで、驚くべく迫力を持つ名シーンとなっている。ちなみに、エンディング曲のみジョニー・グリーンウッドの楽曲ではなく、ブラームスの『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 第三楽章』が使用されている。
《使用されている楽曲》
ヨハネス・ブラームス『ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77 第三楽章』