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鬼畜演出の裏に隠されたハネケの批評精神〜演出の魅力

ミヒャエル・ハネケ監督
ミヒャエルハネケ監督Getty Images

本作は『白いリボン』『愛、アムール』で知られるオーストリアの名匠ミヒャエル・ハネケによる長編4作目となる作品で、スザンヌ・ロタールとウルリッヒ・ミューエが主演を務めている。

登場人物をただ“いたぶるだけ”という鬼畜な展開と、観客の神経を逆撫でする描写の数々によって、“映画史上もっとも不快な作品”とも称される本作。カンヌ映画祭に出品された際にはブーイングの嵐となり、ロンドンではVHSの不買運動まで巻き起こったという噂がまことしやかにささやかれている。

ではなぜハネケは、このような自らの経歴の汚点にもなりかねない作品を撮ったのか。その手がかりは、彼が本作以前に手がけた「感情の氷河化」三部作(『セブンス・コンチネント』『べニーズ・ビデオ』『71 フレグメンツ』)に隠されている。

映画の世界に足を踏み入れるまでテレビの世界に身を置いていたハネケ。この三部作では一貫して現代社会に潜む悪意とマスメディアによる感情の平板化を批判している。

例えば2作目となる『71 フラグメンツ』では、移民少年による銃乱射事件を71の断片的なカットを通して描くとともに、最終的にそれらが「ニュース番組のネタ」として消費される姿を描いている。

彼のフィルモグラフィを考えれば、本作『ファニーゲーム』も、この流れを汲むものと考えられるだろう。では、本作で彼は何を批判しているのか。それは、映画というジャンルそのものである。

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