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日常を異化する爆音〜音楽の魅力

映画音楽を担当したジョン・ゾーン
映画音楽を担当したジョンゾーンGetty Images

本作で使われている主な音楽はアメリカの音楽プロデューサーのジョン・ゾーンによる『Bonehead』と『Hell Raiser』の2曲のみだが、要所要所で効果的に使われている。

まずはオープニング、アンナたち一家が車で別荘へ向かうシーン。車内にはモーツァルトによる楽曲が流れる中、唐突に『Bonehead』が流れ出す。ヘヴィメタル調のメロディと喚くようなボーカルが、物語の不条理な展開を予感させる。他の映画では見られないあまりにもハネケの非凡さが炸裂したオープニングである。

続いてエンディング。アンナたち一家を「始末」した後、次の「獲物」がいる家に向かうパウルとペーター。パウルがカメラ目線になった後、今度は『Hell Raiser』とともに、赤文字でエンドロールが流れ出す。こちらもなんとも暴力的である。

暴力的といえば、作中に登場する「F1カーの爆音」も忘れられない。ジョージがパウルに射殺され、彼の血がテレビに飛び散る。そこにはなんと、カーレースの中継映像が映っているのである。

この映像が仮に牧歌的な映像や、残酷なシーンであれば、わざとらしさが出たことだろう。しかし、F1の映像が採用されることで、微妙な生活感と暴力性が生まれ、パウルの銃声とアンナとゲオルグの悲鳴が異化される。ハネケの鋭い演出センスは音響面においても遺憾なく発揮されているのだ。

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