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世界を放浪するヴィム・ヴェンダースの作家性とは?〜演出の魅力

本作は、テキサスを舞台にある男の妻子との再会を描いたロードムービー。監督は『ベルリン・天使の詩』で知られる巨匠ヴィム・ヴェンダースで、本作は第37回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを受賞している。

ヴィム・ヴェンダース監督
ヴィムヴェンダース監督Getty Images

ヴェンダースはドイツ・デュッセルドルフに生まれ、ヴェルナー・ヘルツォークやライナー・ヴェルナー・ファスビンダーらとともにニュー・ジャーマン・シネマの旗手として注目された。しかし彼の足取りはあくまで自由。『東京画』では日本を、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』ではキューバを舞台に制作しており、世界各国を飛び回り続けている。

さて、そんなヴェンダースが描く“アメリカ”は、寂寥感に溢れている。愛、お金、人生の全てを失った男が、愛する家族を取り戻し、自らの傷を癒す旅に出る。そして、子供と妻を引き合わせた後、再び放浪の旅に出る。人生がしばしば旅になぞらえられるように、男にとっては旅こそが人生なのである。

なお、彼は、制作にあたり、土地に対する理解を深めるため、カメラ片手にアメリカ西部を2〜3ヶ月間周遊。膨大な数の写真を撮り続けた(このとき撮影された写真はのちに『Written in the West』という名で写真集にまとめられている)。

後年、自身がアメリカについて語りたかったことを複雑な形で語っていると述べるヴェンダース。本作には、彼のアメリカ愛が詰まっているのである。

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