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随所に登場する「鏡」と「赤色」の意味とは?〜映像の魅力

撮影監督を務めたロビーミューラー
撮影監督を務めたロビーミューラーGetty Images

本作の映像の魅力は、なんといっても風光明媚なテキサスの風景だろう。

どこまでも広がる荒涼とした砂漠、抜けるような青い空、ハイウェイの曲線美、そして夕景とネオンのコラボレーションー。ストーリーを追っていなくても、じっと見惚れてしまうような視覚的な快楽が本作には詰まっている。

また、随所に登場する「鏡」のイメージにも注目したい。例えばトラヴィスが弟と会話をしながら車でパリスに向かうシーンでは、ルームミラーに映るトラヴィスの姿とフロントガラスに映るテキサスの風景が並置され、自らの内面を見つめるトラヴィスと広大なテキサスの風景が対比されている。

極め付けはのぞき部屋のシーンだろう。マジックミラーに映るトラヴィスの顔とミラー越しのジェーンの顔が重なり合い、融合するカットがある。しかし、二人の間はマジックミラーによって仕切られており、お互いに触ることができない。男女のすれ違いや行き違いをガラス1枚で表現した見事なカットである。

加えて本作では、「赤」が効果的に用いられている点にも注目。本作前半でトラヴィスのキャップやハンターのシューズなど衣装のワンポイントに使われていた赤色は、後半では2人の衣装やジェーンが乗る車の色にまで範囲を拡大する。

しかし終盤、のぞき部屋に向かうシーンからは一転、トラヴィスの衣装は黒色に変わり、ジェーンがきていたピンク色の衣装も黒色に変わる。この変化についてヴェンダースははっきり述べていないが、火のように燃え広がっては消えていくトラヴィスの気持ちを表しているのかもしれない。

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