『PART2』で明かされた最大のサプライズ
前作『DUNE/デューン砂の惑星』(2021)では、少し気弱な王子様といった感じのポールだったが、本作では救世主・マフディーとして覚醒した彼の選択が描かれている。
フレメンのスティルガー(ハビエル・バルデム)に師事したポールは、フェダイキン(フレメンの戦士)として成長し、砂虫(サンドワーム)の幼体から抽出した命の水を飲んだことにより、過去の記憶と未来予知能力が開花し、完全なる救世主(マフディー)として覚醒するのである。
救世主(マフディー)として覚醒したポールは、惑星アラキスの未来には海があること、そしてまだ産まれていない、母ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)のお腹の中にいる妹アリア(アニャ・テイラー=ジョイ)の姿を目にする。
そして同時に母親ジェシカが、宿敵であるハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)の娘であり、ポール自身もハルコンネン家の血筋であることが発覚する。これは『デューン 砂の惑星PART2』で明かされた最大のサプライズの一つと言っていいだろう。
ポールが救世主(マフディー)であると同時に、宿敵であるハルコンネン家の血筋であるという事実は、ポールが内に抱える光と闇を表現していると筆者は考える。この設定は、ポールが権力や力に溺れ、闇堕ちしてしまう可能性を秘めていることを示唆しているように思えてならないのだ。
フレメンを率いて、皇帝とハルコンネン家を追い詰めたポールは、最後の仕上げとして皇帝に決闘を挑む。そして、皇帝の代理であるフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)に勝利し、皇帝の娘である皇女イルーラン(フローレンス・ピュー)と婚約を果たし、皇帝の後継となる。
皇帝の後継になるため皇女イルーランと婚約するというポールの選択は、救世主・マフディーとしてフレメンや惑星アラキスを救うためでもあるわけだが、同時に恋人であるチャニの心を傷つけることにも繋がってしまう。
救世主(マフディー)として覚醒したポールは、未来予知をしてチャニが深く傷つく未来も知っていたはず。にもかかわらず、ポールは大切な人を傷つけてでも、フレメンや惑星アラキスを救うため苦渋の選択をしたのだ。