アンソニー・クインの獣性あふれる演技ー配役の魅力
本作の配役といえば、まずはザンパノ役のアンソニー・クインの獣性あふれる演技を挙げなければならない。
これまでもさまざまな映画で荒くれ者を演じてきたアンソニーだが、本作では粗暴さの中に男の色気や哀愁を滲ませ、奥行きのある演技を披露している。
特に終盤、失意に沈む演技は本作最大の見どころであり、長きに渡って充実した仕事を残した名優・アンソニー・クインの集大成的な演技といってと過言ではないだろう。
なお、フェリーニによれば、リアリティを重んじるネオレアリズモらしく、当初はザンパノ役に本物のサーカス団の団員を起用しようとしたという。
しかし、適切な人物が見つからずにキャスティングは難航。結果的に、たまたま見た映画に出演していたアンソニーの演技が目に留まり、出演が決まったという。
メキシコ人の両親のもとに生まれたクインは、ロサンゼルスで少年時代を過ごし、端役(その多くは悪役)からキャリアをスタート。ハリウッド映画のみならず、本作のようなイタリア映画にも出演するなど、身一つで流浪の役者人生を歩んでおり、深いレベルで役柄と親和性があり、フェリニーニの目を引いたのではないだろうか。
また、ジェルソミーナ役のジュリエッタ・マシーナの無垢で痛々しい演技にも注目。
フェリーニによれば、ジェルソミーナの人格にはジュリエッタの人格が反映されているとのことで、まさに彼女以外には考えられない役になっている。
フェリニーニとマシーナは、映画史上最も有名な監督×女優夫婦として鳴らし、本作以降も『崖』(1955)や『カビリアの夜』(1957)など素晴らしい作品を残している。