鬼才ギャスパー・ノエによる映画史上屈指の問題作―演出の魅力
本作は、『カノン』(1998年)や『CLIMAX クライマックス』(2018年)で知られるフランス映画界の鬼才、ギャスパー・ノエ監督作品。モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルが主演を務める。
1998年公開の中編映画『カノン』以来、新作を発表するたびにセンセーションを巻き起こし、過激な描写で世界中の映画ファンを挑発し続けてきたノエ。本作は、そんな彼が一躍スターダムにのし上がるきっかけになった作品でもある。
本作には、他の作品にはない大きな特徴がある。
それは、物語の時系列が逆になっていることだ。つまり、あらすじからも分かるように、本作では、3人の男女に起きたある夜の出来事を、事件の結末から始まりへと辿っていく。
この点、クリストファー・ノーラン監督の『メメント』(2000年)とも類似した構成になっている。
また、本作を語る際に必ずといっていいほど言及されるのが、9分間に及ぶレイプシーンだ。このシーンは、主演のモニカ・ベルッチの迫真の演技も相まって、映画史上に残る凄惨なシーンに仕上がっており、第55回カンヌ国際映画祭に出品された際には、退席者が続出したという。
ちなみに性描写は、レイプシーンに留まらない。
序盤のゲイクラブのシーンや中盤のハプニングバーのシーン、そして終盤のセックスのシーンなど、全編が性描写と言っていいくらい過激な描写で満たされている。良識ある観客ならおそらく序盤で脱落してしまうことだろう。
とはいえ、斬新な作品だけに、本作でなければ体験できないような映画体験を味わえることもまた確かだ。次ページからは早速本作の魅力に迫っていこう。