観客の不安を煽るインダストリアルノイズ―音楽の魅力
本作の音楽を担当しているのは、トーマ・バンガルテル。フランスのダンスミュージックデュオ、ダフト・パンクの一人として知られるミュージシャンだ。
バンガルテルの音楽が使用されているのは、主に中盤、アレックスのレイプシーンまでだ。
特に、序盤の「Rectum」のシーンで流れる「Rectum」は、ブーン、というバイクの音やお腹の音のようにも思えるインダストリアルノイズが間断なく続き、まるで悪夢の中を漂っているような感覚を演出。
観客の不安と嫌悪感を否が応にも煽っている。
なお、バンガルテルは、ハプニングバーで流れる劇中の音楽も担当。「Spinal Scratch」は、ギターの音楽のリフレインが印象的な本作の世界観にぴったりの曲に仕上がっている。
また、本作では、バンガルテルの音楽に加え、マーラーの交響曲第9番とベートーヴェンの交響曲第7番が使用されている。
特に本作のラストカット、草むらで横たわるアレックスのカットで流れるベートーヴェンの交響曲第7番は、幸せなアレックスの日常を象徴するような穏やかな曲調で、何ともいたたまれない気持ちになる。
ラストがハッピーエンドであればあるほど胸糞になる映画というのは、おそらく本作くらいのものだろう。
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